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つの犬こだわり図鑑Qより
さあ、今月も僕のこだわりを一席。それはあるおじさんとの出会いから始まった。その夜の俺は、まだ少しなれないバンドを、慣れないライブ・ハウスで演奏した。サウンド・チェックなどに時間はかかったものの、そこそこ演奏には支障のない音で、出来も練習のときよりよかった。まあこんなもんでしょ、っとホッとしているところだった。
「もう最低!」突然鋭い電圧を感じさせる親父的ツッコミにひるむスキをついて、決壊したダムの如き攻撃が俺を襲った。
「いやー最低の音だったぞ! こんなのとてもじゃないが聴いてられないよ。店の外で聴いていたほうがまだ何やってるかわかるわい。その証拠にほら、見てみろ。お客さん全然感動してないだろ?ドラムの音なんかパタパタよ。ベースはなにやってんだかわかんないし。だいたいな、今時のお客さんは耳が肥えてんだ。テレビだってCDだってもっといい音してんだよ。素人の方が耳がいいんだ。カラオケだって、みんな音のいい所選ぶし、そっちの方が盛り上がるのを、自然としってんだよ。ドラムももっと普段みんなが聴いてるのに近い音出さなきゃダメ! ベースはいつも最低だな。なにがJBLだ。ヤマハもBOSEもエレボイもみんなくそくらえだ!」
初対面だが、ダムの決壊には土のうを積むしかない。反論その@これはライブなんだから、スタジオ録音のようにクリアにできなくて当然。そのA毎日状況は違うのだ。最善は尽くしている。そのBライブの音の悪さをいうより、音楽の内容に耳を傾けてほしい。そのCまったくかなわんなぁこのオヤジ。
しかしこのおじさんがいろんな感情を沸きあがらせるその刹那、彼の広い額から汗が流れ落ち、一途な思いが湯気となるのが目に映った。そうだ、うお座の俺は博愛的に聞き上手なのだ。
「そうですよねえ、音悪いと聴く気なくなるし、演奏だって余計な気を遣っちゃうし。音は大切ですよね。勉強しときまーす!」切り上げようとすると、「そうだろ? プロの奴らほど、現状に満足しちゃって、ひどい音を当たり前だと思ってんだ。でも悪い音じゃ集中できないし、演奏する方の実力だって発揮できないんだ。だいたい音響理論上、ステレオの原理そのままなら、喋った人、歌った人、その人の位置から音がはずだし、そうすりゃお客の目も自然とそっちに向かうんだよ。今のメーカーのは、全部がスピーカーから音がするから、お客は演奏者に集中できないんだ。」
面白いですね、おじさんもしかして・・・・・・・。
「そう、おじさんもう20ウン年スピーカー作ってるからな。黙ってらんなくなっちゃうんだよ。あれじゃあダメだ・・・・・。おじさんのスピーカー使ってみな。歌だって何だってクリアに聞こえるから。」
さすがにここまで言われると、俺も素人のような気になってきて、「ぜひ今度聞かせてください」というと、「よしきた。まず演奏してる人にいい気持ちになってもらわないとな!」と言って、数日後にはスピーカーを持ってきてくれた。いろんな用途で使ったけど、その素直でアコースティックで澄んだ音色は、他の機械や演奏の良し悪しまではっきり知覚させ、上から下まで音の分離がよく、おじさんの逞しさに似て耐久性に優れている。
P.A.の理想をいえば、演奏者が聴いている音と同じ音を、お客さまも聴いていることだ。アコースティックなら当たり前のことだが、ライブ・ハウス、ホールでその実感をもって演奏できることは滅多にない。P.A.もモニターも同じだが、スピーカーがクリアで素直なら、みんなの音が音楽に集中しやすくなるのも道理だろう。それが無理なら、自分だけでも・・・・・・・そんなわけで、僕のモニターは、おじさんの手づくりスピーカー、ELCY(エルシー)Co.のMODEL M−3となった。
横浜のエアジン、川崎のピアニシモでその音が聞けるよ。興味のある人は、エルシーのおじさんこと、石塚社長まで(TEL
0426-27-0271)
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